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競合他社による従業員引き抜きトラブル

競業他社による従業員引き抜きトラブルの対処法

日本では、国民に職業選択の自由が憲法で保障されています。したがって、自社の従業員が他社に現在よりも好条件の報酬等を提示されて、転職することは憲法違反ではありません。しかし、企業にとっては管理職などの重要な地位や役割を担っていた人物が競業他社に転職することは、大きな脅威となります。一般の従業員であっても顧客情報や独自の技術を流出させるリスクがあります。
そこで今回は、競業他社による従業員引き抜きや従業員の協業他社への転職を制限するためにできることを解説します。

競業避止義務が有効となるためのポイント

競業避止義務は従業員に在職中や転職後に競業他社で働くことを避けなければならない、という義務です。競業避止義務を課すことで、従業員引き抜きトラブルによる損害はある程度軽減可能です。しかし、この義務は、憲法で保障されている職業選択の自由を侵害することになります。従業員に課した競業避止義務が有効かどうかは以下の6つのポイントで判断されます。大前提として、就業規則や競業避止義務契約によって、競業避止義務について明確に規定しておかなければなりません。

  • ●守るべき企業の利益があるかどうか
  • ●従業員の立場は競業避止義務を課す必要性があるのか
  • ●地域的な限定があるのか
  • ●競業避止義務期間は妥当か
  • ●競業避止行為の範囲は妥当か
  • ●代償措置が講じられているのか

これらのすべてクリアしていなくても、競業避止義務が有効と判断されるケースは少なくありませんが、ほとんどクリアしていなければ競業避止義務は無効と判断される可能性があります。

以上の中で重要な点をピックアップして解説します。

守るべき企業の利益の有無

従業員に競業避止義務を課すためには、企業側に守るべき利益等が存在する必要があります。膨大な顧客データや、独自の技術、ノウハウを有している企業であれば、「守るべき利益がある」と判断される可能性がありますが、汎用性がある事業内容で、他社に情報が漏れたとしても企業の経営等に損害がない場合は、守るべき企業の利益はないと判断されて、競業避止義務は無効と判断されるおそれがあります。

従業員の立場は競業避止義務を課す必要性があるのか

競業避止義務は、取締役などの高い位置に有る場合や管理職である場合に課すことができると考えられがちですが、立場によらずその従事していた業務内容で判断されます。

例えば、アルバイト従業員であったとしても、自社の独自技術を習得している場合、ノウハウを有している場合は、競業避止義務契約が有効と判断されることもあります。逆に、執行役員の役員会の構成員のような、非常に高い立場にあっても、機密性が高い情報にアクセスできないないという理由で競業避止義務契約が無効と判断されたケースもありました。

競業避止義務契約の期間の妥当性

競業避止義務は、未来永劫続くのではなく一定の期間を定めなければなりません。その期間が不当に長すぎると無効と判断されることがあります。事例では1年から2年であれば、競業避止義務契約が認められる傾向にありますが、2年は否定される事例もありますので、1年以内に設定しておくことをお勧めします。

代償措置が講じられているかどうか

代償措置とは、競業避止義務を課す代わりに、相当の報酬等を支払うことをいいます。代償措置が講じられていないと、競業避止義務契約が無効と判断される可能性があります。過去の事例では、月給131万円を支払われていた事例であっても、競業避止条項を定めたから賃金が増加したわけではないので、競業避止義務条項は無効と判断されました。

逆に、代償措置が不十分でも認められる事例もあるため、一概には言えません。報酬の高低ではなく、競業避止義務を課す前後で報酬の変化があったか否かという判断基準もありますので、多角的な判断が求められます。

従業員に有効な競業避止義務を課すために

従業員に競業避止義務を課すための方法は、大きく分けて以下の2パターンです。

就業規則を変更して競業避止義務を課す

すでに自社の就業規則に、競業避止義務についての規定が盛り込まれていればいいのですが、規定がない場合は、就業規則に規定することで、競業避止義務を課すことができます。

ただし、従業員の同意なく、従業員の不利益となる労働条件の変更を行うことは、労働契約法で禁じられています。したがって、競業避止義務を就業規則で規定する場合は、従業員に適切に説明、周知しておかなければなりません。一方的に就業規則を変更しただけでは、有効な競業避止義務を課せない可能性が非常に高いと言えます。また、就業規則で、競業避止義務を課す場合は、全従業員ではなく必要な範囲の従業員に課すこと、競業避止義務がある期間を2年以上に設定しないことなど前項のポイントを踏まえて規定しなければなりません。就業規則で競業避止義務を課す場合は、諸条件をクリアした上で従業員の合意を得るなどの手続が必要になります。専門的な法律知識が求められますので、企業法務を専門とする弁護士にご相談ください。

誓約書や契約書で競業避止義務を課す

競業避止義務を課すことができる従業員は個別の立場やスキル、勤続年数や業務内容などの個別の事情に応じて選択しなければなりません。ですので、就業規則ではなく誓約書や契約書といった形で競業避止義務を課すことが望ましいと考えます。

誓約書や契約書であれば、就業規則の不利益変更にあたりませんので、都度行うことができます。また、それぞれの従業員に署名してもらうことで、競業避止義務があることを、容易に周知でき、競業への転職や会社の設立を抑止する効果も期待できます。

競業避止義務違反者に対するペナルティ

従業員や元従業員が就業避止義務に違反した場合、どのようなペナルティを科すことができるのでしょうか。

損害賠償請求

状況によっては従業員に対して損害賠償請求を求めることができます。また、その行為が営業秘密侵害行為に該当する場合は刑事告訴も可能です。損害賠償請求の場合は、実際に損害が発生していることを立証しなければなりません。一般的には書面等で請求を行い、支払いに応じなければ損害賠償請求訴訟を提起することになります。

不正競争防止法違反による刑事告訴

営業秘密を漏洩することは、不正競争防止法21条1項違反に該当するおそれがあり、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」という刑事罰も存在します。従業員の行為が不正競争防止法に違反している可能性がある場合は刑事告訴を検討しましょう。

退職金の返還請求を行う

就業規則や退職金規程、誓約書等などにより、「競業避止義務に違反した場合は退職金を支払わない」などと規定してあれば、支払った退職金の返還を求めることができます。ただし、企業側に重大な損害が発生しているなど、限られた事例で認められますので、すべてのケースで退職金の返還を求められるわけではありません。

競合他社による従業員引き抜きトラブルのまとめ

従業員の引き抜きによるトラブル、転職後の競業他社への転職により情報漏洩は企業にとって大きな脅威となりますので、トラブルが発生する前に就業規則や誓約書、契約書などで競業避止義務を課すことを規定しておきましょう。ただし、競業避止義務を課すことは従業員の、職業選択の自由を侵害することになりますので、無効と判断される事例も少なくありません。競業避止義務の規定がない場合は、法的に有効となるように慎重に規定を設けるようにしましょう。競業避止義務規定を設けたいと考えている方は、企業法務を専門とする弁護士にご相談ください。企業の状況や業態に即した競業避止義務を規定することで、将来の情報漏洩リスク等を回避可能です。

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