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内部通報

内部通報制度を適切に運用することで企業の自浄作用を高める

内部通報制度を設けることで、企業の自浄作用が高まり大きなトラブルの発生を防止できるというメリットがあります。デロイトトーマツリスクサービス株式会社の「内部通報制度の整備状況に関する調査2019年版」では、調査対象のほとんどの企業が内部通報窓口を設定していたものの、「直近1年で不正の告発を受信していない」と回答した企業が66%にものぼり、有効に活用されていないことがわかります。また消費者庁の「改正民間事業者向けガイドラインの概要」という内部通報制度のガイドラインに関する資料によると、労働者の内部通報制度の認知度は2割程度と、内部通報制度が形骸化していることがわかります。

そこで本記事では、内部通報制度の重要性や、導入方法、有効な運営方法を解説します。

内部通報制度とは

組織内外からの申告を受け付けることで、法令違反や不正の発見、未然防止をはかる仕組みのことを内部通報制度といいます。内部通報制度を導入して適切に運用することは以下のようなメリットをもたらします。

企業の自浄作用が高まる

組織が大きくなればなるほど、経営者の目は届かなくなり違法な状態が生まれたり、不正な取引が行われたりしやすくなります。それを放置すると、マスコミや司法などから違法な状態であることや不正が行われていることが指摘されて、企業のイメージは大きく損なわれることになります。しかし、適切に内部通報制度が運用されていれば、早い段階で従業員からの通報が期待できますので、問題が肥大化する前に適切な対策が可能となります。このサイクルが正常に機能すれば、企業の自浄作用が高まり不祥事を予防可能です。

社員による不正を早期に発見できる

横領や背任といった行為は、企業の資産が損なわれるだけでなく、企業側が「管理体制の不備」を問われるといったリスクもあります。しかし、内部通報制度によって、刑事事件化する前、被害額が大きくなる前に、不正を発見できれば被害額が軽微な段階で対応が可能です。当該従業員に対する懲戒処分の実施や、被害額の弁済を適切に行うことで企業への損害を最小限に押さえることができます。

ステークホルダーからの信頼の獲得

内部通報制度が導入され、適切に運用されていることは、企業だけでなく株主、投資家、従業員、債権者などのステークホルダーからの信頼獲得に繋がります。

内部告発を防止できる

内部通報制度は従業員が、企業が設置した相談窓口に通報する仕組みです。したがって、内部通報制度が適切に運用されていれば、従業員が社外の司法機関や報道機関に不正を告発する「内部告発」を防止可能です。内部告発によって、企業が大きな打撃を受け企業イメージを大きく損なった事例は数多く存在します。従業員が内部告発を行おうと考えるほどに追い詰められる前に、気軽に内部通報できる窓口があれば、内部告発のリスクを軽減できます。

内部通報窓口は誰が担当すべきか

通常は、企業内の不正等については直属の上司やその上長に報告するものとされていますが、その不正がその上司や部署全体に関わるものであった場合は、報告することは困難です。また経営者自身が不正に関わっている場合は、通常の報告ルートで報告をおこなっても、その不正が適切に対処されることは難しいものです。

法務部やコンプライアンス部であれば、自分の立場にかかわらず通報することができます。しかし、一部の大企業を除いては、自社内に専門の法務部やコンプライアンス部が存在しないことがほとんどです。そのような企業の場合は、企業法務を専門とする弁護士に内部通報窓口の運用を委託することで、社員が通報しやすい内部通報窓口を開設することができます。消費者庁による内部通報制度のガイドラインでも、「可能な限り事業者の外部(例えば法律事務所や民間の専門機関等)に通報窓口を整備することが適当」とされています。

内部通報制度導入の注意点

では内部通報制度を導入する際にはどのような点に注意しておけばよいのでしょうか。詳しく確認していきましょう。

経営幹部から独立性を有するルートを確保すること

内部通報窓口は、弁護士に委託するなど、経営幹部をトップとする組織から独立した部署に設置することが望ましいです。

内部通報窓口を周知徹底すること

冒頭でお話ししたように、内部通報制度は多くの企業で導入されているもののその存在を知っている従業員は少なく、適切に運営できていないことがわかります。ですので、内部通報窓口が存在することをすべての従業員に周知徹底できるように、常日頃から対策を講じる必要があります。例えば、社内メールや掲示板には常に内部通報窓口の情報を記載しておくなど、常に目につくようにしておきましょう。

匿名性の確保と秘密保持の徹底

内部通報制度で重要なのは、従業員が安心して通報できるような仕組みを作ることです。不正を発見した従業員が内部通報窓口の利用を躊躇する理由は以下の2点に集約されます。

  • ●報復人事が行われないか
  • ●社内の立場が悪くならないか

組織的に不正が横行しており、それを指摘することで自身の待遇が悪くなる、嫌がらせをされるなどの懸念があると、従業員は不正を通報できません。会社の健全性よりも、自身の待遇や立場を守りたいと考えることは至極当然のことです。

これらの懸念を排除して、安心して相談できる内部宇通報窓口にするために求められるのが、「匿名性が確保されていること」や「秘密保持の徹底」です。これらはいかに言葉を尽くして従業員に説明をしても理解されにくい部分です。特に、社内に内部通報窓口が設置されている場合は、「経営側と繋がっている」と思われてしまいます。ですが、社会的に信用がある弁護士などの外部機関に内部通報窓口を設置することで、経営陣との繋がりを否定できます。

内部通報者の保護に関する法律

内部通報者は、公益通報者保護法の要件を満たしている通報を行った場合は、不利益な取り扱いを受けてはならないと規定されています。具体的には以下のような行為を禁じています。

  • ●解雇すること
  • ●退職勧奨を行うこと
  • ●嫌がらせを行うこと
  • ●減給、退職金の減額など
  • ●降格や不利益な配点
  • ●出向や長期出張の命令

これは、人事部門だけでなく経営者側も理解しておかなければならない規定です。内部通報を行うことは、企業の利益を損なうのではなく将来のリスクを大幅に軽減する行為です。公益通報者保護法においても、内部通報者は保護されると規定されていますので、内部通報を行った通報者に不利益な措置を講じた場合は、懲戒処分などの処分を検討しましょう。

内部通報のまとめ

内部通報制度は、企業の自浄作用を高め、内部告発を防止するなど大きなメリットがある制度です。適切に運営できれば、企業の信頼度が高まるだけでなく様々な経営リスクを軽減することができます。

正しく機能する内部通報窓口を導入するために重要なのは、社外の弁護士に依頼することです。消費者庁のガイドラインでも弁護士に依頼することが望ましいとされていますので、内部通報制度の設置を検討している方、形骸化した内部通報制度を正しく運用したいと検討している方は、企業法務に特化した弁護士にご依頼ください。当事務所では、各企業の状況に即した内部通報制度を提案いたします。

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